31939577

山形県の自然環境保全に関する公開アンケートについて

アンケート趣旨。

当協議会は県内それぞれの地域で、「自然は未来の子ども達からの借り物」という考えのもとに、県内のかけがえのない豊かな自然と生活環境を守るべく運動に取り組んでいる17の自然保護団体で組織しております。
私達を取り巻く自然・生活環境は、地球的な規模でその悪化が進み、人間を含むあらゆる生き物の生存を脅かす状況にあります。
 そのために、地球温暖化の防止は勿論のこと、生物多様性の確保も緊急の課題として捉えております。
このような状況は私達の住む山形県も例外ではなく、豊かな自然・生活環境を求める県民の声は日毎に高まっております。
当協議会はこのような状況の中で、近く行われる山形県知事選挙に重大な関心を持ち、貴殿がこの度の知事選挙に立候補なされるとお聞きし、貴殿より山形県の自然・環境保全に関してのお考えを伺いたく、下記事項について質問を致します。
ご多忙のところ恐縮に存じますが、ご回答は1月5日まで、一問につき二百字前後で回答をいただきたいと思います。
尚、いただいた回答は編集、印刷して協議会構成団体にお知らせすると共に、報道機関にも公表いたしますので申し添えます。

質 問 事 項

1)生物多様性の確保という視点から、県内における自然環境に手を付けて実施する公共工事等一定の計画については環境アセスメントの実施を義務づけ、その結果生物多様性を損なう恐れのあるものについてはその計画を変更、もしくは中止させるべきと思いますが、あなたはどのように考えますか。

2) 近年、県内の国立・国定・県立自然公園等でスノーモービルの利用が増加しております。これは規制の緩い本県に利用者が全国から集中しているように思われます。このような自然環境の豊かな地帯における利用は騒音を撒き散らし、樹木を損傷させており、静寂を求めて訪れた利用者に不快を与え、野生動物の生息に大きな影響を与えております。
 あなたはこのような状況をどのように考えどのような対応が必要と考えますか。

3)山形県は最上小国川に穴あきダムの建設を計画しております。今年9月、熊本県知事は未来の子ども達に清流を残すため、既に二千億円の巨費が投じられている穴あきダムの川辺川ダムを白紙撤回しました。また関西の淀川水系でも滋賀、京都、大阪、三重の4府県知事が共同で大戸川ダムの反対を表明して中止になるなど、全国のダムを取り巻く情勢は大きく変化しています。最上小国川ダムは漁協や市民の反対で、本体着工のための河道内調査が頓挫していますし、ダムにたよらない治水対策が可能であるにもかかわらずダム建設を強行しようとしており、無駄な公共事業と言わざるをえません。あなたはこのような状況をどのように考え、今後どのような対応が必要と考えますか。

4)山形県は現在「最上川を世界遺産」に指定するよう取り組みを進めています。最上川は山形県民にとってかけがえのない、まさに「母なる川」であり、世界遺産として指定されることを大いに期待したいと思います。そのためには最上川の過去を文化的に検証するだけでは不十分であり、特に河川文化の基盤である自然環境について、これまでいかに生物多様性を破壊してきたかを反省し、かろうじて残る清流環境の保全、失われた自然環境の復元も含め未来にどのような最上川を創造するか、という視点が必要と思われます。特に、ヨーロッパ、米国では「生きている川」の時代としてダム撤去等を行い、本来の河川の自然を取り戻すことが世界の潮流となりつつあります。そうした時代に登録される世界遺産について、あなたは「世界遺産に指定する取り組み」の可否を含め、今後どのような取り組みが必要と考えますか。

以上、4項目についてよろしくお願いします。

アンケート回答

両候補者からの回答

斉藤ひろし

1) 一定規模以上の土地の形質変更等の開発を行う場合、国の法律または県条例に基づき、事業者は、環境アセスメントを行うことが義務づけられています。事業の実施によって、大気、水、土壌等をはじめ、動植物等の生物多様性、景観等に影響を及ぼす恐れのある場合は、事業計画を見直して変更していただくことになっております。

2) 全国的に、法的な乗り入れ規制の制度はないことから、磐梯朝日国立公園の月山地区においては、「スノーモービラーの会」が「月山特別ルール」を作って、周遊ルートや乗り入れ時期の限定など、
自主規制を行っている状況にあります。これらの動きを契機として、国、県、市町村、関係団体間で連携を図りながら、特に生態系などを保護すべきエリアについては、乗り入れ自粛を求めるなど適正な対応を検討していくことが必要と考えております。

3)過日、地質と温泉の専門家3名の学識経験者からアドバイスをいただきながら、赤倉温泉調査を実施し、その結果を公表したところです。この結果を受け、あらためて「赤倉地区の治水対策は、河川改修ではなく、穴あきダムで行う」との結論に至っており、住民の生命と財産および生活や地域を守るという観点から、この結論に沿って推進していきたいと考えています。なお、ダムの必要性についてご理解いただけるよう、引き続き機会を捉えて丁寧に説明していきたいと考えています。

4)「最上川の文化的景観」は、先日の文化審議会世界遺産特別委員会において「稲作文化を支えた河川の流通機構と、沿川に展開した農耕文化、その結果生まれた高度な精神文化を含む総合的な資産として、価値は高い」等の評価を得、三年後の暫定リスト入りを目指して再始動したところです。
 国土交通省や関係市町村、NPO等と協力しながら進めている「美しい最上川」を維持するための様々な取り組みを今後 いっそう進めて参ります。

吉村みえこ

1)公共工事は、県民生活の向上をもたらすものであり、必要なものについては計画を進めていかなければなりません。しかし、山形の自然環境は、県民のみならず国民全体の財産であり、これら貴重な自然が一度失われると取り戻すことが出来なくなることも忘れてはなりません。公共工事の計画を変更できないのか、代替計画の可能性を探るとともに、広く県民各層や住民、学術研究者等の意見をお聞きし、判断すべきと考えます。

2)豊かな自然を求めることは、人間の持つ本質です。ただ、自然環境は絶妙なバランスの上に保たれているものであり、自然環境を破壊するような大規模林道、海浜開発やスノーモービル、エンジン搭載駆動車等の不法行為に対しては、当該自治体や関係団体の協力を求めつつ連携をとりながら、自然環境保全に向けた取り組みを進めてまいります。

3)直江兼続の石堤に見られるように、治水対策は多くの歴史上の為政者が心血を注いで取り組んできたもののひとつです。また、先人は治水対策を土木事業だけに頼らず、治山対策として山に木を植えるなどの植林事業を車の両輪として取り組んできました。最上小国川穴あきダムについては、地域住民の意見を良く聞き、県民優先主義に基づいた治山治水対策を進めてまいります。

4)ご指摘のとおり、源流から酒田河口まで山形県を縦に貫く最上川において、公共下水道が整備されつつあるなかにも、生活汚水や産業汚水等の流入によって最上川の水質がそこなわれていることは大変残念なことであります。世界遺産登録にむけた、最上川「県民ラブリバー運動」を県民一丸となって取り組んでいくなど、県民意識の向上を図りながらすすめてまいります。